#16 川端康成 『古都』 ~キレイナ町、キレイナ人タチ~

「おすすめ文学 ~本たちとの出会い~」

16回目は、川端康成の長編『古都』をご紹介します。

 


古都 (新潮文庫)

 

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#16 川端康成 『古都』 ~キレイナ町、キレイナ人タチ~

眠り薬を多用していた時期に「うつつないありさま(作者あとがきより)で書いたという『古都』 。それでも、本作品が他と比べて極端に異彩を放っているという印象は、個人的にはあまりありません。

恐ろしいほどのきめの細かさと、奥ゆかしい色気に満ちた文章。本作品は、そんな川端文学の魅力がバランスよく配合され、むしろ安心して味わえる一品、そう言っていいのではないでしょうか。

出典:川端康成 『古都』 新潮文庫, 平成12年第82刷

 

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春から冬にかけて一年の季節の移ろいを背景に、舞台である京都の文化や風物詩をふんだんに盛り込んだ本作品は、京都という地を知るための手引書としても広く読まれていることでしょう。

主人公の千重子は、呉服問屋の娘。彼女は実は捨子で、生き別れた双子の姉妹がいます。二十歳の美しい女性に成長した二人は、生まれて初めて、その夏の祇園祭の御旅所(祭のときに神社の神を迎える場所)で、運命に導かれるように出会うのです。

さて、魅力的な舞台や人物もさることながら、今回この作品を読み返していて僕が強く意識したのは、京都という町の有様からうかがえる、人間の生き方、とでも言うべきものでした。わりと序盤に、こんな描写があります↓

木のきれいなのは町のきれいさ、町の掃除のゆきとどいているせいだろう。祇園などでも、奥の小路にはいると、薄暗く古びた小さい家がならんでいるが、路はよごれていない。

(p. 52)

掃除好きの方だと、この描写にはビビっと反応するのではないでしょうか(笑) 。古いまち京都が、今も変わらず美しくあることの、何気ない秘訣――そこに住む人々の地道な積み重ねを、しみじみと感じます。

その心は、彼らの仕事への姿勢にも見出すことができます。登場人物のひとりで、西陣織の若き職人の言葉です↓

「わたしかて、孫子の代までしめやはる、帯を織らしてもろてるとは、思わしまへんね。今では……。一年でも、しゃんとしめ心地のええように、織らしてもろてるのどす。」

(P. 71)

伝統工芸に従事し、その歴史の重みを背負う計り知れないプレッシャーの中で、目の前の仕事にひたむきに取り組む謙虚な姿勢が感じられます。かっこええなと思います。こういう職人さんの手から、結果として、孫子の代まで永く愛される逸品が生まれるのでしょうから。

(……僕も見習わなくちゃいけません。)

ということで、かなりピンポイントな紹介文になってしまいました。僕にとって、ある意味では「人生の教科書」とも言えるかもしれない、川端先生の『古都』でした。

取りあえず、これから趣味の日課の掃除をします(笑)ので、今回はこれにて失礼いたします。

 

 

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