一酔千日 ~今年もありがとうございました~

今年も残すところあとわずか。ようやく一息つけました。

とりあえず、飲みましょうか。

フォアローゼス1

今年は、どんな一年でしたか。

いえ、どんな一年なんて、無理やりこの時期で区切ることもないですよね。

どこで区切りをつけるかは、人それぞれ。年の瀬だろうと何だろうと、誰かが何かの目標に向かって走り続けているのなら、その人は他のみんなと一緒に立ち止まることもないわけです。

フォアローゼス2

その反面、ことあるごとに立ち止まりたくて仕方がなくなる時もある。僕だけじゃないはずです。

信じる生き方は、ある。でも、その周りに確固たる現実があって、そのまた周りに時代があって――視野を広げれば広げるだけ、ただでさえちっぽけな自分自身を見失う。

そうして本当の自分を見つめ直すために、あえて背伸びをして壁に挑み、よじのぼり、その先に見えてくる未知なる自分の姿――信じた可能性の分だけ幾重にも屈折した自身の姿を、万華鏡のようにのぞき込む。

故に、美しきかな、この世界(笑)。

複雑さを楽しもうとすれば、いくらかは救われるようです。みんな、この複雑さを楽しんでいるのかな。それならそれで、人のたくましさだと言い切った方が、むしろ希望が持てますからね。

イタリアの作家ブッツァーティの短編「神を見た犬」を、ふと思い出しました。

道路開通式
七人の使者・神を見た犬 他十三篇 (岩波文庫)
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神を信じない町の住民たちが、神の存在におびえるという奇妙な話。

本当は自堕落な生き方をしたいのに、信じる気もない神の罰におびえ続け、しかもそのことは互いにひた隠しに隠し、何食わぬ顔で生きている人間たちが描かれています。

こういうのって、すごく現代的だと思います。

でも、こんなふうにして幾重にも心に膜を張らなければ、人は生きていけないのかもしれませんね。

結局のところ、誰にも理解されない「かもしれない」、自分の中の核、本当の自分を守るために。

フォアローゼス3

お酒をいただいている時は、それでもいくらかは素直になれるような気がしませんか?

特に一人で飲んでいる時にふとこぼれ落ちる一言が、何よりも真実味のある今の自分の有り様を言い得ている。

でもそれは、誰も聞いていないからこそ言えることだし、夜が明けて眠りから覚めれば、口にした本人もけろりと忘れている。

フォアローゼス4

少し飲み過ぎて、グラスの周りに妖精が見えてきました。今日は、ぐだぐだ書かせていただきました。

それでも、節目で立ち止まり、世の中の喧騒のさなかで自分自身を静かに見つめ直していたい。そう思っている誰かのためにこんな文章を書いてみました、などと言ったなら、少しは喜んでいただけるものでしょうか。

酒の肴にもならんですか(笑)。

それは失礼いたしました。でもこれこそが、僕の書いているもの。これからも書き続けていきたいものですから、どうぞ悪しからず。

あとはもう、何も考えないで、ゆっくり休みましょう。あたたかくしてお過ごしください。

今年も一年、誠にありがとうございました。

それでは、また。

 

「一酔千日 ~今年もありがとうございました~」への3件のフィードバック

  1. 先生、大変失礼しました、名前を入れ忘れました、「コンナムル」
    です、新年早々、失敗しました、先が思いやられます、また先生
    が、名前を書いてくださったそうで、申し訳ありません。
    酒に酔って書く文章も良いと思います、こちらもリラックスして
    読む事ができます、また素晴らしい写真も載せてください。
    先生も、今年も良い年でありますようお祈り申し上げます。

  2. 先生、明けましておめでとうございます、本年も宜しくお願いします。
    今回の「神を見た犬」は面白そうですね、「神を信じない人々が、
    神を恐れる」との事ですが、完全に信じてないのではなく、悪いこ
    とをしたりすると神様からひどい目に合うのではないかとの恐怖でしょうね、私は神様を信じることにしています、ただ、お願いをす
    るためでなく、感謝するためだけと言う事でです、アインシュタイ
    ンは、「神とは人間の弱さが作ったものだ」と言ったとの事ですが、そういう神様もいるでしょうが、そうでない神様もいると思います、私の菩提寺のお坊さんに「大日如来様とか、観音様とはどういう方
    々ですかと質問したら」その方々は「神様です」とおっしゃってい
    ました、なるほどなと、大いに納得しました。
    さて、今回の先生の文章は「エッセイ」ですね、とても良いと思い
    ます、人は大体の人が、小さい頃から、「自分って何だろうと」な
    にかしら無意識に思っているのだと思います、色々な人に会ったり
    話を聞いたり、色々な所に行ってみたり、色々な情報について考え
    たりしていますね、そしてそれらと照らしあわせて、自分はどうな
    か、自分の有り方はどうか、自分の本性はなにか、やっぱり分から
    ないんだなとか、思うもんだと思います。
    先生は少し酔われて書かれたようですが、本音が出ていると思われ
    とても良い思いました、酔われても、繊細な文章を書かれて、感心
    しました、それと、写真がとてもお上手ですね、「バーボン」です
    か、おいしそうですね、私はあまり普段は酒は飲みませんが、頭が
    しびれてきて酒は良いですね。
    では、寒さ厳しい折りお体に十分気をつけて下さい。

    1. コンナムルさん、明けましておめでとうございます。こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
      (※今回いただいたコメントのお名前欄がブランクでしたので、こちらで入力させていただきました。文面よりコンナムルさんにまちがいないと判断した次第です)
      さて、お酒に酔いながらしたためた文章ということで、大変失礼いたしました。実は、それほど酔っていなかったかもしれません(笑)。文章を書き始めると、体調がおかしい時でも意識だけは妙にはっきりとしてきて、いつも時間が経つのを忘れます。
      そんな僕の拙い文章にいつもお付き合いいただき、心より感謝いたします。今年もコンナムルさんのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

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