少し涼しくなってきましたね。
今年の夏はたくさん汗をかいたので、最近までは、日々の食事も塩分を少し多めに摂っていました。
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料理は、昔はトマト系のパスタをよく作っていたのですが、最近はペペロンチーノを研究(笑)しています。
シンプルでごまかしがきかないレシピは難しいですね。わずかに手もとが狂うだけで、出来上がりに大きく影響します。
にんにくと鷹の爪とオリーブオイル。たったこれだけの素材で、奥深い世界を垣間見せてくれるペペロンチーノ。
素朴さと繊細さの極致、好きな作家にたとえるなら、『銀の匙』の中勘助です。
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先月、「塩」の旧字体である「鹽」について書きました。
汗を大量にかく時期は、パスタをゆでるお湯にも塩を多めに投入します。もはや「塩」ではなく「鹽」レベルの、いささか攻撃的なくらいの匙加減です。
涼しくなってくると、汗もかかなくなります。その分、お料理の塩加減を元に戻していく必要があります。
夏のしょっぱさに慣れた味覚は、秋口の頃、物足りなさを感じています。
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『徒然草』にも、塩にまつわる話があります。
とある博学の医者が、「しお」という漢字は何偏かと尋ねられ、略字の「土偏(塩)」と答えたため、皆に浅学だと笑われてしまった、という話。
別に、「鹽」でなくてもいいじゃない。
どだいこの漢字は複雑すぎて、見ているだけで暑苦しい。もっと実用的に、あっさりと「塩」でいこうじゃないかと、僕はそう申し上げたい(笑)。
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古典だって、なんでもかんでもオリジナルで読むのはキツイもの。
いくら年代物のウイスキーでも、チェイサー無しのストレートで飲み続ければ、喉や胃を痛めるのと同じです。
現代語訳やアレンジを次々と重ねて、その時代を生きる人たちのテイスト――それぞれの心の渇きに、その都度寄り添っているからこそ、古い物語は永く語り継がれてゆくのだと思います。
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季節は少しずつ、秋に向かっています。
そろそろ塩分過多などにも気をつけて、残暑を乗り切ってください。
それでは。