ラファエル前派展を見てきました。

リバプール国立美術館所蔵の作品を集めた 『英国の夢 ラファエル前派展』 を見てきました。

今年2015年に開館30周年を迎えた新潟市美術館にて、7月19日のリニューアルオープンと同時に開催されていたラファエル前派展。新潟での展示はいよいよ9月23日で終了ということで、どうにかこの連休中に滑り込むことができました。

ラファエル前派展(新潟市美術館)

↑よく晴れた午後、≪いにしえの夢――浅瀬を渡るイサンブラス卿≫に迎えられ入館。作者のミレイ(John Everett Millais, 1829-1896)はラファエル前派主要メンバーの一人です。

ラファエル前派およびその周辺作家の作品は、絵のことがあまり詳しくない僕のような人間でも親しみやすいものが多いです。ざっくりと言えば、とにかくきれいです。

描写が緻密で、人物(主に女性)を描いた作品が多いのですが、その表情や衣服はもちろん、背景の細部にいたるまでストイックに向き合い描ききっている、という感じでしょうか。

人も、物も、自然も、分け隔てなく、とてつもない量の愛情を注いで描かれている――どの時代のどの絵も或いはそうなのかもしれませんが、単純にそう感じました。シェイクスピアやアーサー王伝説、ギリシア神話など、有名文学をモチーフにした作品も多数ありました。

ジョン・キーツの詩「聖アグネス祭前夜」を題材にした、マクリース(Daniel Maclise, 1806-1870)の≪祈りの後のマデライン≫が、個人的にいちばん良かったです。この絵だけ見るためにリピートしました。売店でポストカードも買いました。

新潟市美術館

楽しい時間はあっという間に過ぎ……閉館時間、外は日が暮れかけていました。もうすっかり秋です。

リニューアル以来初めての来館でしたが、その前は2014年の「洲之内徹と現代画廊」展の時におじゃましていました。あれからどこがどう変わったのか、記憶が無くてよく分からなかったのですが、プロフェッショナルな工夫が随所になされているらしいのです。

(新潟日報の文化欄 〈2015年9月16日, 朝刊〉 に、リニューアルについての詳細記事が載っていました。興味のある方はご参照ください。)

 

ラファエル前派展、10月3日からは名古屋市美術館で開催されるようですね。絵が好きな方は僕が言うまでもありませんが、文学が好きな方も楽しめるイベントだと思います。是非とも足を運んでみてはいかがでしょうか。

僕はこれから、キーツの詩を図書館で借りて読んでみます。うまく消化できれば後ほど記事にしたいなと思っています。

それでは、本日はこれにて。

 

佐渡ヶ島ブンガク散歩 ~村雨の松~

今回は、生まれ故郷の佐渡からお送りいたします。

佐渡出身といっても、物心ついた時にはすでに島を離れて暮らしていました。盆正月に帰省するだけの佐渡ヶ島という場所について、僕は今でもある種の物珍しさとか、未知への興味とか、そんな漠然とした気持ちを抱いています。

ブンガクをテーマに佐渡を巡ってみたいと思ったのは、つい最近のことです。柄にもなく、人生にわずかな余裕でも生まれてきたのでしょうか。何はともあれ、今回は島の玄関口である両津にて、ブンガク散歩を楽しんできました。

 

★     ★     ★

佐渡汽船両津港ターミナルのすぐそばに、両津大橋があります。島に帰省した人たちの中には、港に迎え出た家族の車に乗せられ、この橋を渡ってそれぞれの生家に帰る人も多いと思います。

その両津大橋に立ち、両津湾を背にして加茂湖の方を眺めた景色です↓

両津欄干橋①

湾から加茂湖に至るまで、両津大橋の他にあと2つ橋が架かっているのですが、その1つ目の橋がこちら、今回のブンガク散歩の目標である「両津欄干(りょうつらんかん)橋」です。

 

両津欄干橋②

↑両津欄干橋にやって来ました。

対岸の建物(海上保安署)の向こうに、大きな松の木が見えますよね(1枚目の写真でも見えます)。あれが「村雨(むらさめ)の松」といって、昭和31年以来、新潟県指定天然記念物となっているクロマツの名木です。

村雨の松①

 

「村雨の松」と命名したのは、明治時代の作家尾崎紅葉です。それ以前、江戸の頃はここに御番所があったことから、「御番所の松」と呼ばれていた――

村雨の松②

――と、海上保安署前の碑文に書いてあります。

 

かつてこの町に「お松」という美しい女性が住んでいて、夜ごと欄干橋に立ち、町の男どもを誘惑していたといいます。非業の死を遂げたそのお松の泣き声が、夜になると「村雨の松」の木の近くで聞こえるという、佐渡の有名な伝説です。

恋多き女、お松。佐渡のカルメン。洗い髪を潮風にさらし、紅を薄く引いた口元で微笑し、なまめかしい、けれどもどこか虚ろな視線を、宵闇に浮かべていたのでしょうか。物書きとしても、男としても、はげしく想像をかきたてられます。

そんなことを考えながら欄干橋に立っていると、いつかこの伝説のリメイクを僕自身の手で書き上げてみたい、などと思ったりしたわけで――その時にこそ、僕の故郷の伝説「村雨の松」の全容を、皆さんに知って頂けたらと思うのです。

それでは、今回はこの辺で。

 

〈参考文献〉

●山本修巳 『かくれた佐渡の史跡』 新潟日報事業社, 平成8年新装版第一刷(p.6-7)
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●小山直嗣 『新潟県伝説集成 佐渡篇』 恒文社, 1996年第一版第一刷(p. 13-14)
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