やっぱり似ている

おすすめ文学#10でご紹介したバルザックの『ゴリオ爺さん』について、書ききれなかったことをひとつ。

この記事を書く前に、2つのキーワード「ゴリオ爺さん」と「めぞん一刻」でグーグル検索してみました。すると件数は少ないながら、ヒットしました。やっぱり同じこと考える人がいるなと思い、ちょっと嬉しかったです。

めぞん一刻〔新装版〕(1) (ビッグコミックス)
(↑書名をタップ/クリックするとAmazonの商品ページにリンクできます。)

みなさん指摘されているように、この2作、共通点が多いのです。

どちらも舞台がおんぼろ安アパートで、そこで暮らす住人たちの人生が様々に絡み合い、何よりアパートの管理人が未亡人という設定に、ピンときた方も多かったのだと思います。

ただ、設定が似ているというだけで、「ゴリオ爺さん」の下宿屋の女主人ヴォケー夫人と、「めぞん一刻」の可憐な音無響子さんでは、趣はずいぶん異なります。バルザックが作品冒頭で描くヴォケー夫人像の酷いこと…

「彼女のぼってりと脂ぎった老けた顔、(・・・)教会の鼠みたいにまるまると肥った身体、はちきれそうにゆらゆら揺れる胸もとなどは、不幸がにじみ出、打算がもぐりこんでいるこの部屋とみごとに調和しており(・・・)」

(平岡篤頼訳 『ゴリオ爺さん』 新潮文庫、平成18年34刷、p. 15)

もう十分ですね。管理人の女性キャラの扱いに関しては、共通項を見つけるのはちょっと難しいようです。

何はともあれ……「ゴリオ爺さん」と「めぞん一刻」、国も時代も違えど、どちらも古典名作として永く愛されてゆくであろうこの2作品、ぜひとも読み比べてみてはいかがでしょうか。

 

モヒート解禁

新潟のメキシコ料理店 「エル・ミラソル」 さんにて。

 

モヒート

キューバで生まれた、メキシコでも人気のカクテル 「モヒート(Mojito)」 が今年も夏メニューに登場です。

まずはそのまま、ライムの酸味を味わって、半分近くまで減ったらストローでミントをぐしぐし潰して存分に香りを楽しむのが僕は好きです。甘さもかなり控えめなのでお料理とも合うと思います。

さて、キューバが舞台の小説で真っ先に思い浮かぶのは、ヘミングウェイ『海流のなかの島々 (Islands in the Stream)』 です。

海流のなかの島々(上) (新潮文庫)
(↑書名をタップ/クリックするとAmazonの商品ページにリンクできます。)

海流のなかの島々(下) (新潮文庫)
(↑書名をタップ/クリックするとAmazonの商品ページにリンクできます。)

ヘミングウェイの作品でもとりわけお酒やカクテルが頻繁に登場し、多くの登場人物たちによってガンガン飲まれます。飲まなくてはやってられない、大人の人生の悲哀と情熱をぐちゃまぜにしたような物語なのです。

主人公トマス・ハドソン(そしてヘミングウェイ自身)がこよなく愛するカクテルの一つが、フローズン・ダイキリ。作中ではだいたいダブルサイズ・砂糖抜きで飲まれています。

モヒートと同じく、キューバ発祥のラム・ベースのカクテルです。どちらも甘くないのが基本かと。お酒も人生も。

「良いシャンペンある?」

「あるが、実にうまい地元のカクテルがあってな」

「らしいわね。今日は何杯飲んでる?」

「分らん。十一、二杯かな」

〈沼澤洽治訳 『海流のなかの島々』 新潮文庫(平成19年34刷) 下巻 p. 130より〉

こんな会話を交わしながら、さりげなくモヒートを注文してみてはいかがでしょうか。飲み過ぎてお店に迷惑かけてはだめですよ。

以上、「実にうまい地元のカクテル」のご紹介でした。是非ともお試しあれ。

それでは。