小松菜を切っていたら、薔薇が咲きました。
根っこからかなり離れたところを切ったのですが、自分でもどうしてこんなもったいない切り方をしたのかよく覚えていません。
いつものように根っこぎりぎりのところで切っていれば、こんな切り口は見られませんでした。しょうもないかもしれませんが、何だか妙に感動しました。
薔薇といえば、小川未明の「薔薇と巫女」という作品があります。下記の作品集(ちくま文庫)に収録されています。
『小川未明集―幽霊船 (ちくま文庫 文豪怪談傑作選)』
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登場人物の「彼」は、香りのない黄色い薔薇の花を夢に見ます。そして夢から覚めると、病身だった母親の死に直面するのです。
その後、死んだ人間を呼び戻すことができる巫女の話を人づてに聞き、彼女の住むという町を訪ねるも、そこには屋敷の跡のみが残され、もはや人の気配もない。
そもそも死者を呼び戻すという逸話も、巫女の存在すらも、「彼」の視点では嘘なのか本当なのか判別がつかない――物語のフレームそのものが幻で出来ているかのような不思議な作品です。
「まだ、いつか見た夢を思っているかえ。」
(出典:2008年第1版、p.221)
友人からそう言われる「彼」。いつか見た、香りはないけれど確かに色彩を持つ薔薇の夢が、「彼」の辿った現実世界とどこまでリンクしているのか、色々と考えさせられます。
きっと、夢と現実の間(あわい)とでもいうべき、ものすごく微妙な精神世界の切れ目にこそ、幻の薔薇は咲くのでしょうね。
小松菜にも、この切り口でしか咲かない薔薇があるくらいですから(笑)。
何の話をしているのかさっぱり分からなくなる前に、今日はこれにて失礼いたします。
それでは。