「ビアズリーと日本」を見てきました。

企画展「ビアズリーと日本」が、新潟県立万代島美術館で開催されています。4月29日から始まったばかりですが、連休中なのでさっそく行ってみました。

ビアズリーと日本(新潟県立万代島美術館)

 

イギリスの挿絵画家オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley, 1872-98)といえば、やはり有名なのはサロメの挿絵ですよね(というか僕はこれしか知りませんでした)。

サロメ (岩波文庫)
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むかし、この岩波文庫の『サロメ』(オスカー・ワイルド著)を初めて手にとった時、この白黒の神秘的な挿絵は何じゃ、と衝撃を受けたものです。切り抜いて額に飾ろうかと思ったくらい。

ビアズリーの他にも、水島爾保布(谷崎潤一郎の『人魚の嘆き』の挿絵、これも良かったです)や蕗谷虹児の作品もありました。

新潟での開催は2016年6月26日まで(追:でした)。

それでは。

 

キーツの「聖アグネス祭前夜」を読んでみました。

先月まで新潟で開催されていたラファエル前派展では、ダニエル・マクリースの≪祈りの後のマデライン≫という素敵な絵との出会いがありました。

今回はその絵の題材となった、イギリスの詩人ジョン・キーツ(John Keats, 1795~1821)の聖アグネス祭前夜 (The Eve of St. Agnes)という物語詩を読んでみた感想など、書いておこうと思います。

(参考・出典:出口保夫訳 『キーツ全詩集 第二巻』 白凰社, 1974年第一刷, 「聖アグネスの前夜」より)

「アグネス」とは、四世紀初頭のローマにて殉教したキリスト教徒の少女の名です。詳しくは諸説あるようですが、ローマの長官(異教徒)の息子との結婚を拒んだことで恨みを買い処刑された少女アグネスの信仰心と純潔をたたえ、1月21日を「聖アグネス」の祝日と定めたというものです。

その祝日のイヴである1月20日の夜、少女が祈りをささげて眠りにつくと、夢の中で未来の夫に出逢えるという伝承があります。キーツの詩では、そのイヴの夜に祈りをささげる少女マデラインが登場します。

「(……)彼女の夕べの祈りは終わり、

飾りの輪の真珠を 髪からすべてはずし、

温められた宝石を ひとつずつ取りはずす。」

(前掲書 p. 120)

まさにこの場面(第26節の前半部分)が、マクリースの≪祈りの後のマデライン≫で描かれているところです。

亜麻色の長い巻き毛にからみついた真珠の珠飾りを、どこかもの憂げな表情でほどいてゆく絵の中のマデライン嬢の姿は、キーツの詩の雰囲気にぴたりと一致します。「温められた宝石」というキーツの表現、おくゆかしいエロティシズムを感じてしまいます。

「聖アグネス祭前夜」は、マデラインと彼女の恋人ポーフィローの恋物語です。互いに反目する両家、許されぬ恋に胸を焦がす若い二人といった設定に、『ロミオとジュリエット』を連想する方も多いと思います。両作品を比べて読んでみるのもおもしろいでしょうね。

新訳 ロミオとジュリエット (角川文庫)
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作品を読むにあたって注目したのが、禁断の恋にはある意味つきものの、「陰の協力者」です。『ロミオとジュリエット』にもいますよね――ネタバレは控えますが、僕は「聖アグネス祭前夜」に登場する「陰の協力者」の存在と、その人物の迎える結末が強く印象に残っています。

さて、そろそろくたびれてきたので今回はこれで失礼いたします。以下に研究社出版の商品リンクを載せておきますので、よろしければ読んでみてくださいね。

聖アグネス祭前夜ほか (小英文叢書)
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それでは。