「セレナイト」というパワーストーンをご紹介します。
真ん中の大きな白い石が、セレナイト(透石膏)です。周りにフローライト(蛍石)の小さな原石を3つ、アレンジしてみました。
セレナイトという名前は、ギリシア神話の月の女神セレネに由来します。「聖母マリアのガラス」とも呼ばれているそうです。とても傷つきやすい石で、先ほどの原石のものは、手に持っただけで指先にきらきらと石のかけらが付着することさえあります。
乱暴に扱っては勿論ダメ。水に濡らしても、手の脂が付いてもいけません。僕が持っている石たちの中でも一番取扱いに気を遣うのが、このセレナイト。だからこそ、愛おしい。淡雪のようにはかなく、それでいて凛とした光沢をたたえています。
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話は少し逸れますが、「聖母のガラス」とは別に、「聖母のグラス」というものがあります。英語では「ガラス」も「グラス」も、同じglassですが、日本語(片仮名)で「聖母のグラス」と言うとき、それがセレナイトとは違うものを指すということを、グリム童話の「聖母の小さなグラス」という短いお話を読んで知りました。
こんな物語です(下記出典をもとにストーリー要約)。
…ぶどう酒を運ぶ荷車がぬかるみにはまり困っていた御者の男のもとに、聖母マリアがあらわれる。「ぶどう酒を一杯飲ませてくれたら、荷車が動くようにしてあげる」と言うのだが、盃(グラス)がない。そこで聖母マリアは、近くに咲いていた昼顔を手折って男に渡し、グラスのような形をしたその昼顔の花にぶどう酒を注いでもらう。聖母マリアがぶどう酒を飲んだ瞬間、荷車は動きだした…
(参考:橋本孝/天沼春樹訳『グリム童話全集』西村書店、2013)
花にワインを注いで女性に手渡すなんて、素敵ですねえ。それをいただくマリア様も、なんだかとっても可憐な感じがします。このお話が元となって、昼顔(セイヨウヒルガオ)が「聖母のグラス」と呼ばれるようになったのだそうです。
パワーストーンの話から、文学の話に脱線してしまいました。物書きのはしくれとしては、それで良かったのです。読んで頂きありがとうございました。
ではでは。
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