キツめの一杯。

前回の投稿でご紹介した中勘助『銀の匙』もそうですが、読んでいてほんわかと癒される文学作品が好きです。

心に栄養がじわりと染みる感じで、毎日読んでも飽きない、刺激がいたずらに多くなく体にやさしい自然食品みたいな物語が大好きです。

でも時には、強いのを一杯、欲しくなる夜もありますよね(笑)。

そこで久々に本棚から引っ張り出して読んだのが、トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』『ヴェニスに死す』。新潮文庫版で二編とも一冊に収録されています。


トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す(新潮文庫)

両作品に共通するテーマは、ざっくりと言えば「芸術家とはどんな生き物か?」です。すなわち、芸術家はみんな孤独で、平凡な社会生活を送る一般人とは相容れぬ別種の生き物だという――それが真実か、単なる偏見かという議論はともかく――その苦悩を赤裸々に描いた物語なのです。

読んでいて、気持ちが晴れやかになる類の本とは少しちがうかもしれません。でも、生きてゆく上で目をそらしがちな物事が秘密めいた中毒性をもって読者に語り明かされることで、ある種の暗い快感を味わえたりもするのです。

芸術家という人間の内面を垣間見たい方、あるいは自ら芸術を志す人たちにとって、興味深い内容の作品ではないでしょうか。

足元がふらつくような、キツめの一杯。悪酔いするようで、心地よさも確かにある、そんな不思議な読後感に浸ってみませんか。

それでは、今日はこれにて。

シャミッソーの『影をなくした男』を読んでます。

この前、古本屋さんで何気なく手に取った一冊の岩波文庫。

 


影をなくした男 (岩波文庫)

 

シャミッソー(Adelbert von Chamisso, 1781-1838)という人の書いた、『影をなくした男』という物語を、今ちょうど読み始めたところです。

まだ最初の方しか読んでいませんが、面白そうですよ^ ^

物語の序盤、灰色の服をまとった奇妙な老紳士が出てきて、ポケットからいろんな道具を次々と出しております。本人いわく、「どんな錠前でも即座にあけられる魔法の鍵」とか、「ひろげるだけで食べたい料理が手に入るナプキン」とか、不思議な道具が不思議なポッケにたくさんつまっているようです(笑)

――ドラえもんの源流の一つ、ここにあり? 検索してみると、やっぱり何人もの方が指摘していました。「どんな錠前でも即座にあけられる魔法の鍵」は、さしずめ「通りぬけフープ」といったところかな。

しかし今から200年前のヨーロッパでこんな小説が書かれていたんですねえ、全然知りませんでした。

主人公の若者は、自分の「影」と引き換えに、例の老紳士から「幸運の金袋」という不思議な道具を手に入れるのですが、どうやらこれから、この若者の運命が大いに狂いはじめるみたいです。

「影」というのは、何かの比喩なのでしょうかね。その辺はまだ何とも言えませんが、これからまたちょっと続きを読んでみようと思います。

↓出典はこちらでした。興味のある方は読んでみてくださいね。それでは。

(シャミッソー 作/池内紀 訳『影をなくした男』岩波文庫, 1993年第20刷)