一日遅れの、ささやかなクリスマス。
まだホールケーキを知らぬ小さな息子は、苺が一つきり乗ったショートケーキを喜んで食べてくれた。
――うまいなあ。父ちゃんは食べないの?
――ありがとう、私はいいんだ。若い頃、嫌というほど食べたからね。
息子を寝かせてから、私は再び仕事に取りかかる。
物語を創るのが、私の貧しき生業である。
息子にたくさんケーキを食べさせてやるためなら、他の仕事をした方がいいに決まっている。
しかし私は、今日も果てしない空想を描き続ける。
我が子から、ホールケーキの現実を遠ざけてしまってでも。
知らぬことは、幸なのか。
求めることは、罪なのか。
分からない。
だが、私にはこれしかない。
今はまだ、心からお前に自慢できる仕事ができていなくても。
今はまだ、お前の無邪気な寝顔を静かに見守ってやることだけが、私の誇りであり、救いだとしても。
どうか、いい夢を見ていてほしい。
夢を見ているやつは、いい顔をしている。
お前はいつも、私にそう気づかせてくれる。
私は、与えられてばかりの父親だ。
少しだけ、私も眠ろう。
私にも、お前と同じ夢を見させてほしい。
私だけの夢ではないから、ずっと見ていたいと思える。
私だけの人生ではないから、これからも頑張ろうと思える。
その思いが絵空事でないことを、私は証明したい。
お前のたった一人のサンタさんは、今年も手ぶらでここにいる。
でも来年こそは、でっかいホールケーキを、二人で心ゆくまで食べ散らかそう。
今年も一年、ありがとうございました。
それでは。