ベルギーの作家ジャン=フィリップ・トゥーサンの『浴室』という小説を読みました。古本屋さんで何となく手に取り、裏表紙の内容紹介で「浴室に居を据える」みたいなことが書いてあったので、浴室に引きこもる人の話かと思って購入しました。
『浴室 (集英社文庫)』
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パリ在住の主人公の男は、アパルトマンの浴室に日がな一日引きこもる…わけでもなく、必要に応じて寝室やキッチンにも身軽に移動するし、ふと思い立って、イタリア旅行に出かけたりもします。読み始めて、割と早い段階から肩透かしをくらいます(笑)。
仕事も、お金も、すてきな恋人もいる。少々人を食った態度をとる傾向があるものの、概して社交的な、都会のプレイボーイといったところ。浴室で本を読んだり思索に耽ったりするのも、日常生活への反逆心というよりは、むしろ気分転換の一言で片づけてしまえるくらい、軽いテイストで描かれています。
よくわからないけれど、何となく、登場人物の奇妙な行動に共感できます。「浴室で過ごす」というのは、入浴するのではなく、服を着たまま、乾いた浴槽の中に座って本を読んだりするのです。湿気がないので、本がしわしわにならなくて大変助かります。
ただ、物語の後半、男が恋人に暴力をふるってしまうシーンはいただけません。崇高な思索のもたらす副産物なのか何なのか知りませんが、暴力はだめ。
それでは(しれっと9か月振りの投稿でした)。