ホールケーキの夢 ~Merry Christmas~

一日遅れの、ささやかなクリスマス。

ぬいぐるみ(親子)

まだホールケーキを知らぬ小さな息子は、苺が一つきり乗ったショートケーキを喜んで食べてくれた。

――うまいなあ。父ちゃんは食べないの?

――ありがとう、私はいいんだ。若い頃、嫌というほど食べたからね。

ぬいぐるみ(執筆)

息子を寝かせてから、私は再び仕事に取りかかる。

物語を創るのが、私の貧しき生業である。

息子にたくさんケーキを食べさせてやるためなら、他の仕事をした方がいいに決まっている。

しかし私は、今日も果てしない空想を描き続ける。

我が子から、ホールケーキの現実を遠ざけてしまってでも。

ぬいぐるみ(苦悩)

知らぬことは、幸なのか。

求めることは、罪なのか。

分からない。

だが、私にはこれしかない。

今はまだ、心からお前に自慢できる仕事ができていなくても。

今はまだ、お前の無邪気な寝顔を静かに見守ってやることだけが、私の誇りであり、救いだとしても。

ぬいぐるみ(安眠)

どうか、いい夢を見ていてほしい。

夢を見ているやつは、いい顔をしている。

お前はいつも、私にそう気づかせてくれる。

私は、与えられてばかりの父親だ。

ぬいぐるみ(親子安眠)

少しだけ、私も眠ろう。

私にも、お前と同じ夢を見させてほしい。

私だけの夢ではないから、ずっと見ていたいと思える。

私だけの人生ではないから、これからも頑張ろうと思える。

その思いが絵空事でないことを、私は証明したい。

お前のたった一人のサンタさんは、今年も手ぶらでここにいる。

でも来年こそは、でっかいホールケーキを、二人で心ゆくまで食べ散らかそう。

 

今年も一年、ありがとうございました。

それでは。

 

 

戻りました。

二か月以上もごぶさたしてしまいました。

生活のための仕事とはいえ、こんなに長いこと物書きの世界を留守にしてしまっては、のこのこと姿をさらすのもさすがに気が引けます。

いつも僕をあたたかく見守ってくれた小説の神様も、今回ばかりはオカンムリと見え、てめえ、どの面さげて戻ってきやがった、なんていつになく口調も荒々しい。言い訳もそこそこに、これからは性根を入れ替えて精進いたしますから、どうかもう一度、私を小説の世界に戻らせてください。平身低頭、ゆるしを請うも、虫のいいこと言うんじゃないよ、今度ばかりはたっぷりとお灸を据えてやるから覚悟しやがれ。どこから持ち出したのか、六尺棒なんて物騒なモノをぶん回して追いかけてきた。その鬼のような形相に、神様の威厳も何もあったもんじゃなく、逃げ回っているこっちが気の毒になってきた。いつの世も、我が子を改心させようと思ったら、ここまでやるのが親心。お後がよろしいようで……

落語っぽく書いてみました(笑)。

モチーフは「六尺棒」という古典落語で、夜遅くに酔って帰った道楽息子に怒り心頭の父親が、六尺棒を持って我が子を追いかけまわすという話。下記のダイジェスト本に面白い話がたくさんあります。

滑稽・人情・艶笑・怪談 古典落語100席 (PHP文庫)
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ようやく、創作活動を再開できそうです。ブランクが長すぎて変な文章しか書けませんでしたが、少しずつ慣らしていきたいと思います。皆さま、どうか引き続きよろしくお願いいたします。

それでは。