「文芸しばた」 ~まちのみんなの文芸誌~

「文芸しばた」という文芸誌を知っていますか。

新潟県新発田(しばた)市の、文芸を愛する市民の皆さんの作品発表の場である「文芸しばた」は、1975年の創刊から今年2015年10月で第41号の発刊を迎えた、歴史ある地方文芸誌です。

文芸しばた

新発田市民および新発田にゆかりのある方を対象に、詩・短歌・俳句・川柳・随筆・小説の6部門で毎年作品を募集しています。

近年より小・中学生の作品の掲載も始まり、冊子もいっそう厚みが増し内容の濃いものとなりました。子供たちが文芸に親しむ環境が少ない中での、すばらしい取り組みだと思います。

さて、この「文芸しばた」第41号にて随筆を掲載させていただきました。「移ろいゆく赤 ~佐藤哲三の夕陽~」というタイトルで、新発田市ゆかりの洋画家・佐藤哲三の人と作品について綴ったエッセイです。機会がありましたら是非ともご一読ください。

ちなみに、自分は新発田在住の人間ではありませんが、同地に縁のある者として過去にも2回ほど作品を掲載させていただいておりました。

微力ながらこれからも「文芸しばた」を盛り上げていければと思いますし、何より新発田の子どもたちの中から未来の大作家が生まれる日を心待ちにしています。その頃には、自分は一体どうなっているんだろう。

それでは、今日はこの辺で。

 

(今回使用した冊子の画像は、新発田市中央公民館の方に許可をいただき掲載しております。転載はご遠慮ください。)

 

キーツの「聖アグネス祭前夜」を読んでみました。

先月まで新潟で開催されていたラファエル前派展では、ダニエル・マクリースの≪祈りの後のマデライン≫という素敵な絵との出会いがありました。

今回はその絵の題材となった、イギリスの詩人ジョン・キーツ(John Keats, 1795~1821)の聖アグネス祭前夜 (The Eve of St. Agnes)という物語詩を読んでみた感想など、書いておこうと思います。

(参考・出典:出口保夫訳 『キーツ全詩集 第二巻』 白凰社, 1974年第一刷, 「聖アグネスの前夜」より)

「アグネス」とは、四世紀初頭のローマにて殉教したキリスト教徒の少女の名です。詳しくは諸説あるようですが、ローマの長官(異教徒)の息子との結婚を拒んだことで恨みを買い処刑された少女アグネスの信仰心と純潔をたたえ、1月21日を「聖アグネス」の祝日と定めたというものです。

その祝日のイヴである1月20日の夜、少女が祈りをささげて眠りにつくと、夢の中で未来の夫に出逢えるという伝承があります。キーツの詩では、そのイヴの夜に祈りをささげる少女マデラインが登場します。

「(……)彼女の夕べの祈りは終わり、

飾りの輪の真珠を 髪からすべてはずし、

温められた宝石を ひとつずつ取りはずす。」

(前掲書 p. 120)

まさにこの場面(第26節の前半部分)が、マクリースの≪祈りの後のマデライン≫で描かれているところです。

亜麻色の長い巻き毛にからみついた真珠の珠飾りを、どこかもの憂げな表情でほどいてゆく絵の中のマデライン嬢の姿は、キーツの詩の雰囲気にぴたりと一致します。「温められた宝石」というキーツの表現、おくゆかしいエロティシズムを感じてしまいます。

「聖アグネス祭前夜」は、マデラインと彼女の恋人ポーフィローの恋物語です。互いに反目する両家、許されぬ恋に胸を焦がす若い二人といった設定に、『ロミオとジュリエット』を連想する方も多いと思います。両作品を比べて読んでみるのもおもしろいでしょうね。

新訳 ロミオとジュリエット (角川文庫)
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作品を読むにあたって注目したのが、禁断の恋にはある意味つきものの、「陰の協力者」です。『ロミオとジュリエット』にもいますよね――ネタバレは控えますが、僕は「聖アグネス祭前夜」に登場する「陰の協力者」の存在と、その人物の迎える結末が強く印象に残っています。

さて、そろそろくたびれてきたので今回はこれで失礼いたします。以下に研究社出版の商品リンクを載せておきますので、よろしければ読んでみてくださいね。

聖アグネス祭前夜ほか (小英文叢書)
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それでは。